レンタル彼氏【完全版】
あの危険信号通り、俺は泉にまんまとはまり、今に至るわけだけど。



「……伊織に愛されてないことが、酷く悲しかったんだ」


「……え?」



愛されてないこと…?




「伊織の愛がない行為がね、酷く悲しかった」


「……………」





あの時。


俺はまだ迷っていた。



何もかもをなくした俺は、逆らうことも出来ないレンタル彼氏のお陰で泉に出会った。

だけど、泉はさっきも言った様に危険だったんだ。




溺れてしまうのが、ただただ怖かった。



それが俺の弱さでもあるんだけれど。


泉を独り占めしたい気持ちよりも、失う恐怖が勝っただけの話。



あの時はまだ、自分の気持ちにも気付いていなかったし。

今まで、誰も好きにならず生きて来たから、泉の存在は何か神秘的なモノのようだった。



今まで、出会ったことないほどの真っ直ぐな存在。


眩しい存在の泉に、近付くことが怖かった。




その理由が、わかってなかったんだ。


その怖さが、好きの裏返しだということに。




全く気付けなかったんだ。
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