レンタル彼氏【完全版】
翌朝、俺と泉はたんぽぽ院に向かう準備をする。
泉はかなりご機嫌で、メイクを軽くしながら鼻歌なんか歌っている。


とっくに準備をした俺は後ろからその様子を見つめる。
その視線に気付いた泉が眉をひそめると俺に言った。



「伊織、見過ぎ」


「ばれた?」


「もう、メイクしにくい」


「いつの間にかメイクするようになったんだもんな」


出会った頃の泉は、化粧っ気なんか全然なかったしな。


「まあ、それなりに成長してますからね」

自慢げに言う泉。
その言い方が可笑しくて、俺は顔を背けて笑う。


「あ、何笑ってんの!も、もう!!」

恥ずかしくなったのか、泉は真っ赤になっている。


「見ないから準備しちゃいな」


「……はい」


少し不満そうだった泉だったけど、早く出かけたいのもあったのかメイクを進める。


ほどなくして、準備を終えた泉が化粧ポーチをカバンにしまうと立ち上がった。

「お待たせ」


「ん」

軽く微笑むと、泉も微笑んだ。
< 747 / 813 >

この作品をシェア

pagetop