レンタル彼氏【完全版】
ここからたんぽぽ院はそんな遠くない。


外に出た俺と泉。

天気がよかったから、歩いて行こうかと二人で並んで歩く。

泉は寒いのか、手をこすっている。
それを見た俺は泉に手を差し出した。


「………ん」


「…え?」


「…………」



何も言わず泉の手を握って、俺のコートのポケットに突っ込む。

泉の手は冷たかったけど、そんなん気にならなかった。



「…あったかい」


ぽつりと、泉は嬉しそうに呟いた。

それが俺の心を温かくさせることを、きっと泉は知らない。



「ふふ、なんか恋人同士って感じ」


「何だそれ」


「だって、昔はこんな風に外歩くことなかったじゃん。だから、嬉しい」


「……あの時は悪かった」


「えっ!!いや、責めてないから!
レンタル彼氏の事情はわかってたし、それを受け入れた上で付き合いたかったのは私だったから」


「それでも、泉には寂しい想いさせた。
不安にさせた」


「……………」



きゅっと唇を噛む泉。

昔のことを思い出してるのかはわからない。
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