レンタル彼氏【完全版】
部屋に通されてから、鈴恵さんの向かいに俺と泉は座った。


「伊織、泉さん」


はあっと、息を吐きながら鈴恵さんは顔を綻ばせた。

「本当に、よかった」


どうして、こんなにも他人のことで喜べるのだろう。

俺は結局は嘘だったけど、聖と泉が付き合ったって聞いた時も。

美佳が社長とうまくいったことも。


手放しでは喜べなかったのに。



黙る俺の横で、泉がはっきりと鈴恵さんに向かって言う。



「鈴恵さんのお陰です。本当にありがとうございました。
伊織とは会えるって信じてたけど、まさかこんなとこで会えるとか思ってなかったから」


それに心が震えた。


「……信じてたの?」


「え?」



俺の問いに、泉が首を傾げた。

泉は、信じてたの?

俺と会えること。



“絶対、会えるから!”




泉はいつだって、眩しい。
真っ直ぐで、穢れを知らない。



それにたまに嫉妬してしまうほど。



「信じてたよ。
不安になった時は、伊織の携帯を見てた」


そうやって、俺の霧を見事に晴らしてくれるんだ。

泉は誰もが成しえなかったことを、一瞬でしてみせるんだ。

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