レンタル彼氏【完全版】
扉を開けて、部屋の中に入る。

やはり、伊織の靴はなくて中には誰もいなかった。



よかった、じゃあ準備しよっと。


それから私はせっせと折り紙で作った輪っかや、ペーパーフラワーをつけていく。
お遊戯会みたいな装飾。


でも、それでいい。





クリスマスだからって、わざわざイルミネーションを見に行かなくたっていい。

自宅にある小さなツリーの灯りで、私は満足だ。



伊織が側にいるなら、何も望まない。





準備を始めて、大分完成に近付いた頃だった。


ガチャガチャと鍵を開ける音がして、玄関の扉が開いた。



伊織が帰ってきた!
まだ終わってないのに!


わたわたしながらも、扉は開く。




現れた伊織は目を真ん丸にして私を見ていた。



「…い、伊織、お帰り」


「……………」



伊織は、私から視線を後ろにずらす。



「……泉がやったの?」


「うん、そう」


「……………」



また黙る伊織。

その態度に不安になる。


……迷惑だったのだろうか?

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