レンタル彼氏【完全版】
「…そっか、クリスマスか」


え、今気付いたの?

工場との往復だから、気付かないのかな?
コンビニですらクリスマスモードなのに。


私の元へ静かに近寄ると、また部屋に施された装飾を見回した。



「……ありがとう」


そう、はにかむように伊織が笑うと呟いた。



「いや、全然っ」


「ううん、大変だっだろ?準備。
だから、ありがとう」


「………うん」


そんな風に言われたら、何も言えなくて頷くしか出来ない。



「クリスマスとか、鈴恵さん達と過ごした記憶しかないな」


「えっ?お客さんとかは?」


「ぷっ、泉、あんなん偽物だよ?
本気でクリスマス一緒に過ごす奴なんかいないよ」


「ええ?!そうなの?」


「だって、金持ちってことはだよ?
クリスマスは主催のパーティーがあったりするからね。
まさか、そこに俺なんか連れてくわけないじゃん?
だから、会っても違う日。
当日はないね」


「……そうだったんだ」



なんか、もっと煌びやかなんだと思ってたけど…そんなことなかったんだな。

意外、かもしれない。
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