レンタル彼氏【完全版】
「まあ、俺の場合は、だけどね。
他は知らない。
だから、クリスマスとか意識したことないよ。
関係ないし。
鈴恵さん達が同じ様に飾り付けして、やっと気付くぐらいだから」


「…これからは私が毎年気付かせてあげるからね」


「ははっ、そうだな」


「でさっ、ケーキ作って来たんだ!」


「え?」


そう言うと、私は今朝作って来たばかりのケーキをテーブルに置いた。

得意気に私は伊織を見る。


「まじ」


「うん、まじ」


「食べたい」


「甘いの、平気だった…?」


不安に思っていたことを尋ねると、伊織は首を横に振る。



「好きじゃないよ」


「えっ!?」


「好きじゃない、だけど食べたい」


「ええっ!?」


「いいから、早く出して」


「ああ、うん」


急かされるまま、私はケーキを取り出す。

苺が敷き詰められたショートケーキ。



「…おお」


伊織はケーキを見て感嘆の声を漏らす。


「これ手作り?凄いね…」


それから指で生クリームを掬う。


「あっ、行儀悪いっ」



私が言うのも聞かず、伊織はぺろっとその指を舐めた。
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