レンタル彼氏【完全版】
時間をかけて包装をとくと、しっかりとした箱の蓋を開けた。



「……指輪?」


伊織は手に取ることなく、その指輪をじっくりと眺める。


「うん、そう。
それ限定モノなんだよ」


「そうなんだ」



伊織は淡白な返事を返すだけで、それ以降何もアクションを起こさない。


不安になった私は伊織の顔を見て、問い掛けた。



「…気に入らなかった?」


それに伊織がハッとして顔を上げる。



「違っ、ごめん。吃驚して…それから自分に嫌気が差してた」


「嫌気?」


「…だって、俺はこんな恋人同士の為にあるようなイベントの日にプレゼントすら用意してないんだ」



そう言いながら、悔しそうな顔をする。



「…私、もう貰ったよ」


「…何を?」


「伊織の未来」


「…なんて…?」


「これからの伊織の未来を全部私が貰ったの」


「なんだそれ」


「伊織を独占出来るってことだよ!幸せ過ぎるじゃん」


「………はあ?そんなんわざわざプレゼントしてやらなくてもあげるよ」


それにふふっと笑う。
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