レンタル彼氏【完全版】
取り乱しながらあの男は叫ぶ。

「ち、ちげえ、お前じゃねえ!!
俺が殺したいのは、伊織、お前だ!!!」



目が血走っていて、尋常じゃない様子は見てとれる。


近くにいた通行人がその様子を見て叫ぶと、すぐに人が集まってきた。

あの男は叫びながら、集まる人を包丁を振り回して威嚇する。



「…い、泉!!!」


あの男のことなんかどうだっていい。
刺すならば刺せばいい。


あの報いなら俺は受け入れることしか出来ない。




だけど、泉は関係ない。


「泉!!!泉!!!!」


「…伊織…、ぶ、じ?」


虫の息で話す泉。
どうして、どこまでも自分なの…?



「ふざけんな!!何で助けるんだ!!!
泉!!!」


もう、言ってる事も滅茶苦茶だ。


だけど、泉は何も言い返さず微笑んだだけだった。


「目、開けろって!!!泉!!!」


誰かが救急車を呼んでくれて、俺はそれに泉と共に乗りこむ。


あの男は、駆けつけた警察官数名に取り押さえられていた。



そんなんどうだっていいよ。

もう、どうだっていいよ。




どうして。

どうして。




どうして、泉なの?

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