レンタル彼氏【完全版】
搬送先の病院に到着すると、弾けたように救急隊員は飛び出した。

俺はそれに着いて行く。


手術室に運ばれる泉に、何度も声をかける。



「泉っ!泉!泉!!」



もちろん、返事なんかない。


だけど、俺は叫ぶことしか出来ない。


なんて、無力で無能なんだろう。




「お連れの方はこちらでお待ち下さい」


そう、言われて俺はそこで泉をただ目で追った。



医師や、看護婦に囲まれながら、泉は連れて行かれる。






「…………泉…」



そのまま。


俺は力が抜けたように、そこにしゃがみこんだ。




どれぐらい経っただろうか。


わからないけど、力なくしゃがみこむ俺の後ろがドタバタと騒がしい。



「い、泉はっ?!」



……泉の名前を呼んでいる?





…俺は後ろを向く。

そこにいたのは泉の両親だろう、夫婦が看護婦に詰め寄っていた。




誰が、知らせたのだろう。
俺は何も言ってない。



泉の荷物か、携帯か。

……そういえば、俺警察から話聞かれてないな。



その内聞かれるだろうか。
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