レンタル彼氏【完全版】
返事をしない俺に再度その子は話し掛ける。




「………伊織だよね?」




頷くことも煩わしい。


思考を止めたい。



「私、和!泉の一番の親友の、和!」



それから、和と言った子は俺の顔を覗き込むようにその場にしゃがみこんだ。




「…………の、どか?」



その名前に聞き覚えはあった。

会わせたい、そう何度も言っていたけど中々タイミングが合わないことと、親友が結婚式の準備に追われて暇がないことで会えずにいた。


結婚式終わったら、ゆっくり新居にでも行こうかな。

そう、泉が笑ってたことを思い出す。




「あー!本当伊織だ!
初めまして、泉なら…絶対大丈夫!」


「……え?」


「だって、泉は伊織を置いていなくなるわけないもの!」


「………………」




この子は何を、言っているの?




「…泉は、伊織と別れてからもずっと伊織と会えるって信じてたんだから」


「…!」



それに胸がぎゅうっとする。
苦しい。


…苦しい。




「…だから、伊織も信じてあげて?」



それから、そっと俺の手を握りしめた。
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