レンタル彼氏【完全版】
「お、全面鏡」



伊織の後について部屋に入ると、そこは隠れ場所がないような、鏡ばりの部屋だった。

天井にも、壁にも鏡。


ラブホって、こんななの?


「ひゅう~こりゃ丸見えだね」


伊織は子供みたく無邪気に笑うと、ベッドに寝転んだ。



私はどこへ行けばいいのかわからずに、そこに立ち尽くす。
伊織はそんな私に気付くと、何故そんなとこにいるんだというような顔で

「隣おいでよ」

と、言った。


学校早退して。
昼間からラブホにいる。


そんな現実に後ろめたさを感じながら、私は一歩一歩伊織へと足を運ぶ。
目の前まで行くと、自分の隣をぽんぽん叩きながら促す伊織の隣に座った。


瞬間。


伊織が私をベッドに押し倒した。



真上にある伊織の顔。
視線が重なり合う。



伊織が私を見る瞳に冷たさはない。


だけど、温かさも感じられなかった。
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