『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「このプリントは、誰が———?」

「化学の永岡先生だ」
西森は転入生だったなと思いながらこたえる。

「考えてみれば教員だって学内図書館を使うんだったな」


「永岡先生・・・噂を耳にしたことはあります」


意外だったのは意外性がないことだ。

永岡先生は僕の耳にも入るほど、変人の呼び声が高かった。変人よりも、変態だろうか。

常に薄汚れた白衣に無精ひげ、うすら笑いという風体なので、特に女子生徒に気味悪がられているようだ。


材料があればサリンが作れる、などと授業中に発言しては、生徒たちの反応を楽しむようなタイプらしい。

サリンが作れるなら、爆弾もお手のものなのだろうか。


屈折した支配欲の持ち主なのだろうが、爆弾で人を殺めようとするほど振り切れているとは。
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