『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
ドーナツ型の透明な樹脂製の輪っかが、彼女の首にすっぽりはめられている。

頸椎ねんざ用のギブスにしては、無機質で、冷酷な趣がある。
内部を透かし見る。

三色コードやさまざまな色の針金が絡み合い、渾然一体となった様相だ。

どんな猛毒のヘビでも、こんなグロテスクな模様は描けないだろう。


ちょうど喉にあたる部分に、小さな目覚まし時計が入っているのが見てとれた。

丸い本体の上に二つベルをくっつけた、いささかレトロにして正統派の目覚まし時計だ。


「首輪型時限爆弾か」


「伊藤さんのオリジナルですね。
ドーナツ型のアクリルプレートなんて、市販されてないでしょうから。かなり試作をかさねたはずです」
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