『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「わたしは———人ではありません」


「なら、何者だ?」


西森が人でないなら、 “人の心” と呼び習わされているものを持たない僕は、何者だろう。
人でなしと人殺しは、そういえば一字違いだ。


「分かりやすくいえば、死神のようなものです。
終さんを不穏分子として排除するのが、わたしに与えられた任務でした」


「不穏分子、」
僕は、その言葉をくりかえす。



「時代が違えば、終さんも処刑人や拷問執行官として、生きる場があったかもしれません。
今の価値観にはそぐわないので、均衡を保つために排除することに決まりました」


「勝手だな」

「おっしゃるとおり」
西森が唇のはしをゆるめる。笑みをつくろうとしているのか。
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