『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「終さんは、川上ヒサシに殺される予定でした」


底光りするナイフの刃と、それに憑かれたような川上ヒサシの目を思い出した。


「川上ヒサシに刺されて亡くなり、彼も何年か少年院に入る。世界の均衡を保つため、こうして死神はときどき人間に干渉します」


「だが、失敗した」


ええ、と西森はうなづきたかったようだが、首に爆弾がはめられているので、あごをすくめる仕草にしかならなかった。


「死神としてあったわたしは、あの時、終さんの背後で、ことのなりゆきを見守っていました。あなたが刺され、すべてが終わる。
なのに———、最後の最後、わたしは川上ヒサシに姿を見せてしまった。驚いていましたね」



死神・・・と放心した様子でつぶやいた川上。
彼は、僕の背後に、西森を見たのか。


誰ぞやにいわれたように、僕にはほんとうに死神がついていたようだ。
そうして、僕は殺す側ではなく、殺される側だった。
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