『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
「———意識が、戻らないんです」

口を開いたのは、彼女のほうだった。
地味な色合いのスカートの上で、手をぎゅっとにぎりしめる。手の甲に、固く静脈が浮き、茶色い班が散っていた。


よけいな言葉をはさまないほうがいい、と判断した。そもそも言うべき言葉を持っていない。


「・・・遠野さん、ですか。あなたには本当に感謝しています。
・・・この子が、世界が、殺されそうになったところを、助けていただいて」


いえ・・、とかなんとか口の中でつぶやく。

彼女の視線は、西森の横顔にそそがれたままだ。

しばし二人で、もの言わぬ西森を眺めつづけた。
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