『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
とても安らかな表情をしている、ように見える。


「・・・世界から、うちのこと・・家庭の事情を聞いていますか?」
やああって、彼女は問うた。


いえ、と短く否定する。
「自分のことは話さなかったです」

ほんとうだ。僕も尋ねなかった。


「——見てのとおりですが、世界は、わたしと主人の実子ではありません」


ジッシを「実子」という言葉に変換するのに、コンマ数秒を要した。

黙って耳をかたむける。

ボリュームが大きめのひとり言、といった口調で、彼女は語り出した。
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