『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
子どもを、女の子をもつのが、わたしたち夫婦の夢でしたが、叶いませんでした。

こればかりは授かりものですから。しかたないとあきらめて、夫婦二人で、子どものいない人生のあれこれを考えておりましたら。


それがある日、去年のことですが、弁護士という方から連絡が来まして。

戸籍でやっとたどれるほどの遠縁のさる夫婦が、自動車事故で亡くなりまして。
ひとり残された高校生の娘の身元引き受け人になってもらえないかというお話でした。

他に身寄りはなく、このままだと施設に入ることになる、と。

保険金や遺族年金、遺産もあるので、経済的負担はかからないし、一人の少女を助けると思って引き受けてもらえないかと、頼まれまして。
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