Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「じゃあ、帰るね」
「駅まで送るよ」
 玄関まで見送りに来てくれた涼太が靴を履こうとしていた。
「いいよ。明日から仕事だし、涼太はゆっくり休んで」
 私は手を振って、玄関を出た。

 マンションを出て、空を見上げると厚い雲で覆われている。梅雨の季節なら、当たり前の空。湿度を含んだ風はべたべたしているのに、どこか肌寒い。

 駅へ向かいながら、涼太のことを考えた。涼太は私を泊めようとしなければ、自分が泊まろうともしない。不可抗力とは言え、同じベッドで寝起きを共にしてしまっている。

 あの元彼のことがあったから、気を使ってくれてるんだよね。涼太と元彼は違うって分かっているから、彼氏である涼太とそういうことをしても大丈夫だと思う。そうは思っていても、その時になったら、やっぱり怖いと思ってしまうのかな。こんなことが大丈夫かどうかなんて確認する方法なんてないし。何となく涼太が我慢しているんだろうな、というのも感じる。どうしたらいいのか分からなくて、同じことをぐるぐると考えたまま、アパートへ帰った。

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