Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「仕事で来たのに、この会話はないな。さて、本題に入ってもいいですか?」と、カバンからA4サイズの封筒をだしながら先輩が言った。

「はい」
「これを見て下さい」
 手渡された書類には古民家の写真が添付されていた。外装、内装がある程度わかる。
「あのこれは?」
「この古民家のオーナーが隣同士に並ぶ古民家をくっつけて、1つのフランス料理店にしたという依頼があったんです」
「フランス料理店ですか」
「そこで、リノベーションを多く手掛けている『ARAI DESIGN』と共同でできないでしょうか?」
 中野工房はデザイン事務所でもあるが、メインは構造計算。これは中野工房だけで、やるのは難しいかもしれない。

「わかりました。検討してみます」
「是非、お願いします」
 話を終え、中野先輩を事務所の外まで見送りに出た。

「佐伯、今度飲みに行こう。同じ建築業界の人間同士、情報交換しよう」
「そうですね」
 先輩は「じゃあ」と言って、足早に人の群れへと向かって行った。

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