Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 体が急に浮き上がり、ソファからベッドへと移される。
 涼太が私の顔を覗き込むと、頬をゆっくりと撫でた。大きな手に自分の手を重ねる。

「涼太の手って、温かいよね」
「そうかな」
「うん。涼太の手や腕って、温かくて、優しいの。酔っ払って、服を握っちゃったのも、きっとそのせいよ」
「温まりたかったらいつでも言って。いっぱい抱きしめてあげるから」
 その言葉に普段の自分では絶対に言わないことを、涼太の耳元で言っていた。「今、いっぱい温めてほしい」なんて甘い言葉を。

 今までの不安は何だったんだろう。涼太の体温、声、手、唇が私に優しく触れていく。そのたびに「涼太」と名前を呼んだ。

 体の内側も外側も、涼太の以外存在しなくなった時、耳元で「奈央美、好きだよ」と言われた。何だか涙が出そうになった。

 夢のような甘い時間のあと、肌を隙間なく合わせたまま、眠りにつく。明日の朝一番に見つめるものが、涼太だと思うと穏やかな気持ちになれた。
< 117 / 207 >

この作品をシェア

pagetop