Sweet Room～貴方との時間～【完結】
「照明はそれなりのものを使った方がいいですね」
「そうだな。照明を安くすると、ほかに手をかけても結局チープな感じが出るしな」
「ですよね。難しいです。古民家の外装に合せて、内装を用途にあったものにするって」

　少しあるものに手を加えて別のものにする。それはゼロから作りだすより簡単なように見えるけれど、実は違う。ゼロから作りだす方が圧倒的に簡単だ。
　あるものに手を加えるということは、元々あったものへの敬意を持たなくてはならない。だから、内装をこうしたいから外装を大幅に変更とはいかない。古民家や歴史的な建物に対しては特にそう。考えれば考えるほど、手を加えてはいけないのではないかと思ってしまう。

「ホタテのカルパッチョとスズキのポワレです」
　目の前には置かれた前菜は、１枚の絵画のように盛り付けされている。
「さあ、せっかく料理が来たんだから、仕事のことから少し離れて料理を楽しもう。」
「はい。美味しそうですね」
　フォークとナイフを持ち、ホタテを口に入れる。酸味の効いたソースが新鮮なホタテを引き立てている。
「このホタテ、美味しいな」
　中野先輩の言葉に軽く頷く。
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