Sweet Room~貴方との時間~【完結】
建築家、野田治生は北海道出身で、何よりも自分の生まれ故郷を愛している。愛している場所で最高の愛のある建築をする。それは野田治生のポリシーだ。そこに就職するということは、先輩が北海道に行ってしまうということを意味する。
「そうですか。よかったじゃないですか。ずっと憧れだった野田治生の事務所で仕事をするんですよ。すごいです。先輩、頑張ってください。私は……、私も応援しています」
本当は遠距離でも頑張ります、と言いたかった。でも先輩の顔を見ていたら言えなかった。
顔は前を向いているのに、目だけが違う方向を見ている。その顔をする時、必ず言いにくいことを言う時だ。
私の誕生日の日、誕生日プレゼントを買い忘れたときも、両親が旅行に居ないから家に遊びにこないかと誘ったときも、今みたいな顔をしていた。
「佐伯、俺は多分、遠距離恋愛はできない。きっと向こうに行ったら、仕事で手一杯で、佐伯のことを気遣うことができないと思う。そんな状態で佐伯のことを中途半端に縛り付けることはできない」
やっぱり、思った通りだ。
「わかりました。私も遠距離恋愛には向かないと思います。好きな人には一番近くに居てほしいって思うタイプだから」
「ごめん」
これが中野先輩との最後の思い出となった。
「そうですか。よかったじゃないですか。ずっと憧れだった野田治生の事務所で仕事をするんですよ。すごいです。先輩、頑張ってください。私は……、私も応援しています」
本当は遠距離でも頑張ります、と言いたかった。でも先輩の顔を見ていたら言えなかった。
顔は前を向いているのに、目だけが違う方向を見ている。その顔をする時、必ず言いにくいことを言う時だ。
私の誕生日の日、誕生日プレゼントを買い忘れたときも、両親が旅行に居ないから家に遊びにこないかと誘ったときも、今みたいな顔をしていた。
「佐伯、俺は多分、遠距離恋愛はできない。きっと向こうに行ったら、仕事で手一杯で、佐伯のことを気遣うことができないと思う。そんな状態で佐伯のことを中途半端に縛り付けることはできない」
やっぱり、思った通りだ。
「わかりました。私も遠距離恋愛には向かないと思います。好きな人には一番近くに居てほしいって思うタイプだから」
「ごめん」
これが中野先輩との最後の思い出となった。