Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「それにしても、お父さん来るの遅くない? 新幹線、遅れてるのかな? 先に料理の方、持ってきてもらっちゃう?」
 宏実さんはスマホを出して、操作しだした。
 確かに、ちょっと遅い。どうしたんだろう。
「そうだね。料理頼もうか。お義父さんが来てからだと、遅くなるしね」
 幸司さんが仲居に料理の用意を頼み、小鉢がすぐに運ばれてきた。それらがテーブルの上に綺麗に並べられた時に、襖が開いた。


「すまん、遅くなった」
 コートを片手に入ってきた涼太のお父さんは、申し訳なさそうに私の顔を見て会釈した。
「父さん、遅かったな。どうしたんだよ」
 向かいに座ったお義父さんに涼太が聞いた。
「いや、新幹線内で具合を悪くした人がいたらしくて、途中の駅で長時間停車していたんだよ」
「だったら、連絡くらいくれよ」
「いや、すまなかった」
 これで全員が揃った。さっきまで和やかな雰囲気だったのが少し硬くなる。

「改めて紹介します。佐伯奈央美さんです」
「佐伯奈央美です。よろしくお願いします」と言って、頭を下げた。
「初めまして。涼太の父です。これからも息子ことをよろしくお願いします。困ったことがあれば遠慮なく相談してください。奈央美さんはうちの大事な家族ですから」
「はい。ありがとうございます」
 不意に涙腺が緩みそうになった。

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