Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 俺が佐伯奈央美という人を意識しだしたのは、職場での慰労会で酔いつぶれた彼女を介抱した時からだった。

 彼女は飲み会でビールを何杯も飲み、1人で帰るのはもはや不可能という感じになり、同じ路線で帰る俺が送る羽目になった。家までちゃんと送る予定だった。途中「吐く、気持ち悪い」と言い出した彼女。運良く、姉が働いているホテルが近くにあり、姉に無理を言って、姉の社割で1泊させてもらうことになった。

 部屋の中では最悪だった。彼女はトイレに直行、トイレからは動かなくなる。終いには「運んで」と言い出す。ベッドに横にならせれば人のワイシャツを掴んで爆睡。おかげで自分もホテルに泊まることになった。
 佐伯さんは薄れる意識の中、俺に聞いてきた。

「幸せになれる?」

 なんでそんなことを聞いてきたのか分からないけれど「幸せになれます」と俺は答えた。
 そして次の日の朝も最悪だった。目覚めが悪い。俺はベッドから転げ落ちて目を覚ました。記憶のない彼女は睨んでくるし。ま、事情を話したら、顔を赤くして「ありがとう」と言われた。この時、彼女を見て、初めてドキっとした。

 酔っ払った彼女の介抱は大変だったけれど、おかげで彼女と昼飯を一緒に食べたり、飲みに行ったりする機会が増えた。

< 179 / 207 >

この作品をシェア

pagetop