Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「どれにする?」
 A定食、B定食、C定食の3つしかないメニューを見せる松下さん。

「俺はA定食の生姜焼きだな」
「私はC定食で」
「鯖の味噌煮な。おばさん、A定とC定」

 隣のテーブルを片付けている店員さんに松下さんが注文を言った。

「はいよ」
 店員さんはこっちを見ると、丸めた紙のように目を縮めて、笑いながら答えた。その笑顔を見ると数年前に他界した祖母のことを思い出した。

「なあ、大丈夫か?」
「何がですか?」
「ここ1か月くらい、元気ないだろ。無理してる感じがする。それに金曜の慰労会、酒の飲み方がいつもと違ったぞ」

 さすが敏腕営業マン。人の変化に対して敏感。松下の彼女が、結婚はしなくても一緒にいることができればそれでいい、と思ってしまうのも納得だった。

「ただ疲れが溜まってるだけです」
「そうか。休めるときは休めよ。佐伯に倒れられると、うちの事務所は困るからな」

 その言葉で私はどれだけ救わえるか。私には仕事という居場所がある。それを実感させてくれる言葉だった。
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