Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「別に、何もないですってば。ただ、慰労会の帰りに自宅まで送っただけですよ」
「本当に送っただけか?」
「それ、社長にも同じような顔で同じこと言われました」
「どんな顔だよ」
「エロい展開を望んでる顔です」

 女将さんのいる前でこんな言葉を使うのは不本意だったけれど、それ以外の適切な言葉が浮かばなかった。女将さんの方を見ると口元が微かに歪んでいる。

「悪かったな。エロい顔で。で、どうなんだよ」
「何もしてません。送り届けたあと、すぐ帰りましたから」
「つまんない展開だ」
「つまんなくて結構です。僕は当たり前のことをしただけですから」

 厚揚げを一口サイズに切り、口の中に放り込む。豆腐の水分がじゅわっと広がり、そこには香ばしさと生姜の爽やかな辛味があった。

「なあ杉山、全部吐いてしまえ」
「何をですか?」
 ビールで厚揚げを流し込む。

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