Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「お前さ、佐伯のこと気になってるだろ」
「ゲホッ、ゲホッ。な、なにを、きゅう、に」
 確信を突かれたせいで、ビールが変なところに入った。炭酸もので咽るのはかなりキツイ。

「お前さ、わかりやすいな。多分、佐伯も薄々、気づいてると思うぞ」
「そんなことないですよ。佐伯さん、普通じゃないですか」
「そんなことないですよ、ね。認めたな」
 しまった! やり手営業マンの話術に引っ掛かった。
「ああ、もう何でもいいじゃないですか!」
 松下さんは笑いながらビールを飲んでいた。

「2週間後さ、ジュエリー・ショップのオープンセレモニーがあるんだろ。それに佐伯と一緒に出席するんだよな?」
「はい」
「なら、それを利用しろよ。どうせ夕方から始まるんだから、2人とも直帰になるだろ。ついでに次の日は土曜日。休みじゃん」
 枝豆3、4粒、口に放り込む。その話を聞きながら確かに上手くいったら、甘い時間を過ごせるかもしれないという事を考えていた。
 そう上手くはいかないよな。

「まあ、その時の状況によりますよ」
「男なら、その日に絶対に落としますって、断言してみろ」
「無理です。佐伯さんの気持ちが1番大事なんで」
 松下さんは俺の皿に残っていた厚揚げを横から奪い「他の男が横から入ってきても知らないからな」と言って、厚揚げを一口で食べた。
 それぐらい俺だってわかってるよと、心の中で呟いた。

< 185 / 207 >

この作品をシェア

pagetop