Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「着いたぞ」
 彼女のアパートのエントランス前に着き、手を離した。
「寄っていかないの?」
「ああ、今日はいいや」
「明日も休みなんだし、寄っていきないよ」

 寄りたに決まってる。でも、お互いの気持ちを確認したばかりで、その日のうちには……。ガッツいてると思われそうだし。
「いや、俺、酒が入ってるし。何ていうか、そのいろいろな事情というか。とにかく今日は帰るよ」
 彼女に背中を向け、来た道を戻ろうとしていた。

「杉山。というか涼太、その、いいよ」
 彼女が回り込んで、俺の前に立つ。俺は何も言わず、彼女の顔を見つめた。
「帰っちゃ、やだ」
 こんなこと言われたら、帰れるわけないし。

「俺も帰りたくないよ」
 彼女の手を握ると、少し手が冷えていた。

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