Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 髪の毛が揺れる感覚がして、目が覚めた。目を開けると、奈央美が俺の左腕に頭を乗せ、左手が俺の髪の毛を梳いている。

「おはよう、涼太」
「おはよう。よかった、ベッドの上で起きれて」
「しつこい」と言って、髪を引っ張ってきた。
「痛いよ。ごめん。俺の髪、いじるのが好きなの?」
「うん。昔、飼っていた犬と涼太の髪、似てる」
 彼女の指はずっと髪の中をゆるゆる動いている。
「犬? どんな犬?」
「黒いポメラニアン。黒くて、ちょっとくせ毛のところが似てるの。メル」
 そのまま俺の頭を胸に抱きかかえた。
「俺、犬じゃないよ」
「メル~」と、彼女は俺の反応を楽しんでいる。
 体を入れ替えて、彼女を上に覆いかぶさった。
「俺がポメラニアンのメルじゃないって、実感させましょう」
「ちょっ……、んっ」
 勢いよく唇を塞ぎ、朝から奈央美と人間同士の戯れ愛(じゃれあい)を楽しんだ。


 俺と奈央美は順調だった。奈央美からはモカブラウン色したテディベアのキーホールダーと部屋の合鍵をもらい、気が付けば、お互いの部屋にはお互いの私物が当たり前のように紛れ込んでた。
 奈央美という存在が、俺の中で当たり前の存在へと変化していた。

< 194 / 207 >

この作品をシェア

pagetop