Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 この言葉が引き金となって、俺は心にもない言葉を 奈央美にぶつけてしまった。
「奈央美さ、俺と居るより元彼の中野さんと居た方が楽しいんじゃない? 俺よりしっかりしてるし、年上だし、包容力もあるし。どうせ俺はまだまだ未熟だし、3つも下だしね。奈央美がしたいようにすればいいんじゃない」
 心にもないこと言葉が口からスラスラと出る。頭では「止めろ」と言っているのに、止められない。ガンガンと警告音が響く。
 涙目だった奈央美の目から涙が溢れ出す。

「涼太、そんな風に思ってたの? 年のことを気にしているのは私だけだと思ってた。年のこと気にしているのは涼太の方だね。きっと、私がそれを感じ取って、年のこと気にしちゃってたのかも」
「何だよ、それ。全部、俺のせいか? 年のこと気にすることも、元彼だって言えなかったことも。もういいよ、帰る」
 ソファに置いてあったコートやカバンを持って、泣いている奈央美の横を通り過ぎる。そして玄関を勢いよく閉めた。

 エレベータに乗り、その場にしゃがみこんだ。
 何やってんだよ、俺。
 自分が言った言葉が頭の中でぐるぐると回る。その間を縫って、奈央美の泣き顔がチラついた。

 この喧嘩以来、奈央美とは話していないし、連絡も取っていない。仕事では事務的な会話しかしていない。

< 196 / 207 >

この作品をシェア

pagetop