Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 昼休みが終わり、午後の業務が始まる。

「佐伯、杉山。ちょっと」と、社長に呼ばれた。多分、あの仕事のことかな。社長の座るデスクの前へ向かった。
「何でしょうか?」
 不思議そうに問いかける杉山の横に立つ。

「松下が午前に取ってきた仕事を2人でやってもらいたい。銀座に新しくオープンする『natural jewelry』銀座店。これが概要の書類だ。"男性が気軽に入れる"というのがコンセプト。つまりアクセサリーに関する女の目線、プレゼントをする男の目線が必要になる。そこで、2人でペアを組んでやってもらいたい。杉山はここまで大きいものに携わるのは初めてだと思うが、佐伯と一緒に頑張れ」

 杉山は目を丸くして固まっている。
 私は昼ごはんのとき、松下さんに大方のことは聞いていた。

 来年の11月に新店舗を数か所オープンする『natural jewelry』。"全ての女性にシンプルで存在感あるアクセサリーを"がブランドのテーマに掲げている。販売店舗は全国にある。テレビCMを流さない。その代わり、雑誌や電車の中刷り、ビル等の巨大広告を使って宣伝している。そのポスターが必ず新進気鋭の若手を使って、常に斬新なものが多い。

「はい。ありがとうございます。佐伯さん、よろしくお願いします」

 全身に気合を入れ、挨拶する杉山。杉山をデザイナーとして成長させるいい機会ね。

「うん。よろしく。今回は男性の意見が重要だから頼りにしてるわ」
「はい」
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