Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「この前、というかかなり前になったけれど、酷いこと言ってごめん。奈央美は仕事で中野さんと会っているだけなのに、それに対して嫉妬して、あんなことを言って、本当にごめん。奈央美の言う通りだと思う。俺、自分が年下であることを、気づかないうちに気にしてた。早く奈央美を支えられる男になりたいと思ってた。そんな風に考えている時に、中野さんが現れて、どこかで焦ってたんだ。だから仕事を我武者羅に頑張って、そのせいで奈央美と話す時間が減って、あの喧嘩。本末転倒だよな。俺、この2カ月、いろいろ考えたんだ。自分がどうしたいか。それで決めたことがある」

 奈央美はただ俺の顔を黙って見つめていた。

「佐伯奈央美さん。俺と、杉山涼太と結婚してください。俺と結婚していいと思うなら、右手にある鍵を、結婚できないと思うなら、左手にある鍵を取ってください」

 俺は頭を下げて、目をつぶっていた。右手、左手の指先からぶら下がる鍵と動物。風の音しか聞こえない時間をひたすら耐える。

 両方の指先からキーホルダーが消えた。
 びっくりして、顔を上げる。
 奈央美は2つのキーホルダーを目の高さにまで上げていた。

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