Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「佐伯さん、『natural jewelry』の新店舗案です。お願いします」

 杉山が3枚の書類を私に手渡してきた。
 なかなかやるじゃない。今回の企画に杉山を入れた社長の目って、すごい。

「なるほどね。着眼点がいいわ」
「本当ですか?」
「うん。確かにジュエリーショップって、全てが見渡せてしまうから、入りにくい。逆を言えば、商品を探している姿が見られてしまうってことよね。ファンシーショップとの比較するなんて、なかなかやるわね」
「ありがとうございます」
「ただ、1つ問題点があるのよね。ジュエリーショップって、何で全てが見渡せると思う?」

 私が気になっている問題点。杉山は気が付いているか。

「多分、防犯ですよね。それと多くの商品を見比べやすくするため」
 分かっているのね。これなら問題ない。今回はある程度、杉山に任せてもいいかもしれない。
「そう。ジュエリーは高価なものだから、セキュリティは重要なのよね。ディスプレイ用のケースの背を高くするってことは、死角が増える。そうすると防犯カメラの台数だって増えてしまう。ここはアイディアを出し合っていきましょう」
「はい」
「もうこんな時間ね。じゃあ、杉山、お昼行くよ」
「あっ、はい」

 お財布を持ち、事務所のドアを開けた。杉山がドアの上の方を押さえる。
 女の扱い、分かってるな。元カレと大違い。そう思った瞬間、自分に少し嫌悪した。なんで杉山と比べているんだろう。失礼でしょ。

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