Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 自分のデスクに戻り、他の仕事に取り掛かる。『natural jewelry』のことを考えてもきっとうまくは行かない。他のデザインを考えているときに、連鎖反応でいいアイディアが浮かぶこともある。

 仕事が一段落付き、時計を見ると17時。ああ、浮かばなかったか。


 杉山を見ると荷物をまとめて帰ろうとしているところ、松下さんに捕まっていた。何とか逃げようとしている杉山を、松下さんは引きずるように事務所から連れ出して行った。
 心の中で『杉山、頑張れ』とエールを送る。松下さんと話すと、気づいていない自分の気持ちをズバっと言い当てられちゃうのよね。

 特に予定のない今日は家の近くのスーパーで食材を多めに買い、アパートへ向かった。
 なんだろう。誰かに後を付けられているような気がする。足を止めて、後ろを振り向く。誰もいない。気のせいかな。気持ち悪い。急いで帰ろう。

 いつもより早歩きでアパートへ向かう。なるべく、人通りや車が多い道を選んで帰った。部屋の鍵を開け、中に入る。鍵を掛けると、体から力が抜けた。
 よかった。無事に帰れた。
 リビングへ行き、窓の外を見る。怪しげな人影がないことを確認して、カーテンを閉めた。

 引っ越そうかな。もう少し、広い部屋ぐらいに移る余裕はあるし。心機一転するのもいいかも。

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