Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 あの日以来、誰かに後を付けられている感じが何度もあった。今のところ、ポストに何かを入れられたり、物がなくなったりはしていないけれど、精神的にきつい。 こういうとき、頼れる人がいるといいんだけどな。
 途端、杉山が浮かんだ。
 なんで杉山。いくらなんでもね、後輩に助けを求めるのはダメだよ。この前、介抱してもらったし。お兄ちゃんにでも相談しようかな。
 休みなのに予定のない私は、そんなことを考えながらネットで賃貸アパートを探していた。



 休み明けの月曜日は『natural jewelry』とのデザイン会議。休日をのんびりと過ごしたおかげで、体の疲れがすっかり取れていいた。

「プレゼンは杉山がやりなさい。このデザインは杉山が考えたものだし、“男性が気軽に入れる”というコンセプトなんだから、男性が説明したほうが効果的だし、説得力も出るわ」

 私は『natural jewelry』に行く道すがら、杉山に言った。杉山は一瞬、びっくりした顔をして、一瞬黙った。そして、キリッとした顔になる。
「はい。わかりました。僕がやります」
 杉山なら大丈夫、ちゃんとできる、と横に並んで歩く杉山を見て思った。

 『natural jewelry』の本社に着くと、ミーティングルームに通される。5分程待つとドアが開いた。
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