Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「はじめまして。『natural jewelry』企画の中原です。よろしくお願いします」
「はじめまして。『ARAI DESIGN』の佐伯です。よろしくお願いします」

 中原さんと名刺交換を済ませると、杉山と中原さんが名刺交換を始めた。
 中原さんは黒髪に、シンプルなスーツ。凛とした空気感のある人。杉山は中原さんを見て、耳が赤くなっていた。
 緊張で赤くなってる訳じゃないわよね。男って、美人には弱いんだから。

「どうぞ、お座りください」と、名刺交換が終わった中原さんが言う。私たちは軽く会釈をしてから、イスに座った。
「では、デザインの説明を致します」
 杉山は落ち着いた感じで、中原さんの前に資料を置いた。

「今回のコンセプトが“男性が気軽に入れる”という事で、デザインを考えさせていただきました。ジュエリーショップに男性が入るというのは、プロポーズと同じくらい気合と勇気がいるものです。ショップの外観を男性向けにしても、ジュエリーショップはジュエリーショップです。男性が気軽に入るというのは不可能です」と、杉山は落ち着いた口調だった。

 これなら、最後まで杉山に任せても心配いらない。
 中原さんは杉山の説明に耳を傾けながら、資料を見ている。

「ですから、ジュエリーショップに入る前に、気合を入れる状況を数秒作ることにしました。次の資料を見てください」
 資料をめくった中原さんが、顔をあげた。これは「何ですか?」というような顔で。
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