Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「佐伯さん、すごく美味しいですよ」

 杉山は若いからなのか、男だからなのか、いい食べっぷりをしていた。こういう風に美味しそうに自分の手料理を食べてくれる人っていいな。

「本当? よかった。遠慮しないで食べてね。ご飯、お替りもあるから」
「ありがとうございます。短時間でこれだけ作れるなんて、料理好きなんですか?」
「うん。学生の頃から好きで。部活も調理部に入っていたの」
「へえ。姉ちゃんも佐伯さんを見習うべきだよ。姉は料理っていうか、家事全般が苦手で、一緒に住んでいる頃は俺が全部やってたんですよ。もう、嫁に行けたのが不思議です」

 杉山はお姉さんのことを話しているとき、口調は面倒な感じで言っていても表情は柔らかくて、お姉さんのことを大事にしているんだな、と思った。
「姉弟(きょうだい)、仲がいいのね」
「佐伯さんは兄弟姉妹(きょうだい)いるんですか?」
「うん。兄が1人」
「仲いいんですか?」
「仲いい方だと思うよ。8個も上だから、喧嘩にもならないしね。あ、ご飯お替りする?」
 杉山のお茶碗は綺麗に平らげていた。

「お言葉に甘えて、お願いします」
 ご飯をよそって戻ると、杉山はどこを見ているのかわからない目をしていた。

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