Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「久しぶりの恋に浮かれてたんだね。付き合いだして3カ月くらいに、他にも彼女がいるなと思うようになった。すぐ別れればよかった。彼といる時間が心地よかったの。甘えてた。いい加減、別れなきゃと思ってね、今年の8月に彼と別れたの。それからグズグズ引きずっちゃって、突然泣くしね。あの時はごめん。急に泣いてびっくりしたでしょ?」

「まあ、びっくりしました。心配もしました」
「ごめんね。別れて1カ月経ったくらいかな、人につけられているようなときが2回ぐらいあって。それも彼だったのかもしれない。とんでもない男を好きになっちゃったわよね、私。反省しないと」
 彼との思い出を振り返れば振り返るほど彼という人物がわからなくなった。それは、私が彼をちゃんと見ていなかったのかもしれない。

「元彼を好きになった自分を全否定しちゃダメですよ。男から見れば、はっきり言って、ダメな男だと思います。でも、佐伯さんは彼の中にある気遣いの心を見つけた。そこを好きになったんですから。欠点が多く見えてしまっている人の良いところを見つけたんです。それは自分の眼力が良すぎたと思えばいいじゃないですか。その良い目を使って、次の恋に活かせばいいと思います」
 杉山は私のぐるぐると行ったり来たりする感情を包んでくれた。本当に年下なのかな。

「ありがとう。私、今日、1日で杉山に何回、ありがとうって言ってるんだろう。でも、ありがとうしか言えないのよね」

 小さな沈黙が流れ、横目で杉山を見た。杉山はここにいるのに、ここではないどこかを見ているような雰囲気が漂っている。
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