Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「佐伯さん、あのクイズの答え、言います。 3番、好意です」

「なに言っているのよ」と、可愛げのない反応しかできない。杉山の視線から逃げるように、桜を見上げた。

「俺、本気です。佐伯さんが好きです。最初は姉ちゃんに似ていると思ったんです。年上なのに危なっかしい感じがして心配だった。でも、佐伯さんのいろいろな面を見て、だんだん気になって。元彼さんのことで自覚しました。佐伯さん、前に酔っ払ったとき『幸せになれる』って、俺に聞いてきました。それも答えます。幸せになれます。俺が幸せにします。俺、浮気したことありません。する気もありません。隠し事もしません」
 杉山は私の方へ真っすぐ向かってくる。

「今すぐ、返事はしないでください。ちゃんと考えてください。それで職場の後輩以外見えないって言うならそれでいいです。今までと変わらず先輩後輩でいます」
 私は何も答えず足元に視線を落とした。数枚の花びらが靴の横を通り過ぎる。数カ月前まで元彼のことを引きずっていた私が、今すぐに何か言えるような立場ではない気がした。

 無言でいる私の頭を軽く撫でて「帰りましょう。だいぶん涼しくなってきましたし」と言って、杉山は背を向けた。私たちはアパートに着くまで何も話さなかった。

「じゃあ、また明日。答えが出るまではお弁当、作らなくていいですよ。おやすみなさい」

 何でこんなに優しいの?
 杉山の背中に問いかけた。
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