彼方は、先生だけど旦那様。
学園と家、先生と旦那様
気まずい夜
はあ……。
さっきから何度も
ため息をついている私です。
「奥様大丈夫ですか?
先程からため息ばかりつかれて
いますが…。」
「あ、大丈夫ですよ!
心配かけてすみません。汗」
「いえ、ならよいのですが…。」
家政婦さんにも心配されて
しまって…。
私なにやってるんでしょうか…。
そんな私は今、料理係の家政婦である
百合子さんと
夕食を作っています。
今日の夕食は、
ストロガノフにアイゴブリドです。
いつもはご飯を作っている途中
とてもお腹がすくのですが、
今日は別のことで頭が一杯で
お腹がすきません。
はあ…。
私…
颯君に好きだって伝えてしまいました…。
そ、それに…。
あの薫様の一言………。
「恋々を幸せにできるのは
この僕しかいない。」
…あんなに真剣な顔で…。
私、勘違いしちゃいます。
あんなこと言わないでほしい…。
薫様は何を考えて
あれを言ったんでしょうか。
冷たい薫様
少し甘えたな薫様
明るく頼もしい薫先生
そして…
私に愛を伝えた薫様。
ねえ、薫様。
本当の薫様はどこにいるのですか。
なんで私の心をかき乱すのですか。
抱き締めあって、
お互い好きだと言いあって、
手をつないだ颯君よりも
何を考えているのかわからない
薫様のことの方が
私の頭の中を占めているなんて。
鍋の中のスープ鶏は
まだまだ沸騰するには
時間がかかりそうです。