彼方は、先生だけど旦那様。
夕食の片付けを済ませた私は、
お風呂に入り
ゆっくり自分の部屋で休むことに
しました。

ピンク色のソファに深く腰を掛け、
しばらく目を閉じていると。

ぴこんっ

携帯が鳴りました。

見てみると、
颯君からのメールで…。

少し戸惑いながらも開いてみると、

『恋ちゃん、あいつに
いじめられてない?』

そう書いてありました。

あいつ……とは、
薫様のことですね…。


『まだ帰ってきてないよ。』

そう返すと、すぐに
既読がつきました。


…あ、私だって一応
メールくらいするんですよ!
そういうのしないと思ってる方
多いでしょうが!

…と、
そんなことはどうでもよくて…。

『もしなんかあったら、
僕に言ってよね!
全力で恋ちゃん守るからさ!』



…颯君……。




『うん!
ありがとう!
でも私は大丈夫だよ!』


そうやってメールで会話を
していると、
私の部屋の前を誰かが通る足音が
聞こえてきました。
そして、隣の部屋に入る音がしました。


…薫様だ。


まだ薫様とあまり顔を合わせたく
ないけど、
薫様用にとって置いた夕食を
食べてもらわないと…。

そう思い、私は
自室を出て
薫様の部屋に向かいました。



コンコンッ



「薫様、恋々です。
あの、夕食がリビングにあるので
食べて来てください。」


そう私が言ってしばらくしたら
ドアの方へ歩く足音が
聞こえました。

そしてそのまま、


ガチャッ


ドアを開けた薫様と目があって。
少し固まってしまいました。

心なしか、薫様は
何か言いたそうにしてるように
見えました。


「…薫…様…?」

恐る恐るそう口にすると、

「……ジャマ…。」



はあ…。

またそんなことか。

はいはい、
邪魔でしたね。
すぐどきますから。



呆れながらも、ドアから離れようと
したその瞬間。











ぎゅっ…………








…え…?





「か、薫…様…!?」

「黙って。
…ごめん…。
少しだけ………このままで…。」


私を抱き締めながら
悲しげにそう言った薫様。




弱々しいその言葉とは裏腹に
私を包む腕の力がどんどん
強くなっていきます。

そのたびに私の心臓が
バクバクとうるさくて…。
…きっと薫様にも聞こえて
しまっているだろうな。

…でもいいや。
今はもう少し
私もこうしていたい…。








何にも言わずにただ私を抱き締める
薫様の背に

私も腕を回しました。
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