「1495日の初恋」
なんで…
なんで私なんだろう…
胸がいっぱいになって、涙がこぼれそうになる。
「じゃ、またな。」
「…なんで…?」
「ん?」
「なんで矢島くんは、私なの…?」
「なんでかなんて、わかんないよ。理由なんてない。気づけば目で追ってる。上原さんのことばかり考えてる。」
「私なんて…いいところなんか、一つもないのに…。」
「俺から見たら、いいところしか見つからない。」
私はもう何も言えなかった。
「じゃ、行くね。」
「うん…。」
矢島くんは、何度も振り向きながら帰っていった。
私は、矢島くんが見えなくなってから、ドアを開けて中に入った。
電気もつけずに、ヘナヘナとその場にしゃがみ込む。
小さな紙袋に詰まった、大きな気持ち。
矢島くんの気持ちが苦しかった。
嫌いになんかなれない…。
でも、好きになることもできない…。
どうにもならない。
外は雨が降り出した。
バラバラと叩きつける雨の音が、まるで槍のように私の心を突き刺していく。
体も心も、ちぎれるほど痛かった。