「1495日の初恋」
見えているけれど、なかなか着かない。
走って走って、やっとたどり着く。
ハアハアハアハア…
息を整えながら、見上げたタワー。
あまりの迫力に、足がすくむ。
真っ赤な鉄骨が、迫ってくるようだ。
「登ろうぜ!!」
「え?でも…。」
「ほら、いいから来いよ!」
矢島くんは、私の手を強く握り直して走り出す。
タワーの展望台。
雲に届きそうな場所からの眺めは、息をのむほど素晴らしい。
「すっげー…。」
「うん…。」
それだけ言うと、お互い黙ったまま、眼下の街並みを眺めていた。
ふと気付けば、矢島くんは私を見ている。
その眼差しは、さっきまでの無邪気な明るい矢島くんとは違う。
…矢島くん?
繋いでいた手に、力が込められた。
心臓がドキンと音をたてる。
そういえば、手…ずっと繋いだままだった。