「1495日の初恋」
すれ違う心
秘めた想い
宿舎に戻り、あれこれと用事を済ませて消灯。
暗くなるのを待っていたかのように、布団の中で話し始める綾香と美紀。
「藤崎くんに言ったよ。でね、オッケーもらったよ。」
美紀が嬉しそうに言う。
「私もね、上原に告ったよ。」
「どうだった?」
「うん、付き合ってくれるって。」
付き合うって?
綾香と?
心が震える。
私、泣きそうだ。
「結は?」
「えっ、あ、私?私は…。」
なんて答えて良いかわからない。
なかなか話し始めないでいると、綾香が代わりに話し始める。
「矢島は結に告白しなかった?あいつ、結のことずっと好きだったみたい。」
「あ、…うん。」
「今日の朝、矢島にね、結が誰のことを好きなのか教えろって言われてね。矢島が好きらしいよって言っといた。」
「えー、じゃ、結も両思いじゃん!」
美紀が私の肩に手を回して、引き寄せる。
「良かったねー!じゃ、付き合うんでしょ?」
美紀の声は弾んでいた。
「両思いなんだから、付き合うに決まってるじゃん!」
綾香が答える。
いえーいって言いながら、小さくハイタッチする二人。
こうして私は、自分の意思とは裏腹に、矢島くんと付き合うことになってしまった。
もう、なんでもいいや。
どうせ、上原くんは綾香と付き合うんだし。
「私、ちょっとトイレ。」
はしゃぐ二人のテンションにはついていけない。
私は先生に見つからないように、ロビーに向かった。