「1495日の初恋」
『俺、引っ越すことになった。
上原さんと離れることになって、初めて気づいた。
自分の気持ちを押し付けてばかりで、相手のことを何も考えてあげていなかった。
そんな奴は、誰かと付き合う資格なんてない。
だから、自分の気持ちにケジメつけてきた。
綾香、お前も俺と同じじゃないのか?
上原に、自分の気持ちばかり押し付けてるんじゃないのか?
俺とお前は、なんか似てるな。
好きな相手が、自分の方に向いてない辛さは、俺が一番よくわかるよ。
綾香、上原とちゃんと話せよ。
お前、いいやつだし、顔だってまあまあだし、絶対すぐにいいやつが見つかるよ。
じゃあな。
元気でいろよ。』
おせっかいなメール。
矢島らしい。
自分だって辛いくせに、かっこつけちゃって。
「あ~あ。」
上原を誰にも取られたくなくて、嘘ついて見栄はって…。
こんなことしてたって、上原の気持ちが変わることなんてない。
そんなこと、とっくに分かってた。
だって、上原はいつだって結を見ていたから…。
上原、ごめん。
結、ごめんね。
私、上原とちゃんと話したよ。
なんか、とってもスッキリしたよ。
矢島、ありがとう。
というか、矢島の方が、どこに行ってもモテモテだと思うよ。
メールの画面を閉じて、ベンチを立った。
結、間に合ったかな…。
見上げた空は、昨日までの空とは違って見えた。