「1495日の初恋」
今、俺は高校に向かう電車を待っている。
時間が来るまで、昨夜届いたメールを、何度も読み返していた。
『俺、東京に引っ越すことになった。
だから、結とも別れた。
上原に言いたいのはそれだけ。
ちゃんと伝えたからな。
今、結はフリーだからな。
高校、頑張れよ。』
なんだよ、これ。
今さら、俺にどうしろってんだ。
結は、矢島のことが好きだったんじゃないのかよ。
自分の気持ちは、自分でカタをつけた。
もういいんだ。
結のことは、とっくに諦めてる。
だいたい、結に会う時間なんて、もう俺にはない。
ここに来てくれたら、少しは話ができたかもしれない。
でも、結が来ることはない。
俺が今日寮に入ること、あいつは知らない。
どのみち、会えたところで、どうにもならない。
だから、いいんだ、これで。
駅の時計を仰ぎ見れば、もう少しで3時になる。
もうそろそろだな…
地面に置いた荷物を持ち上げようと、身体を屈めたそのときに、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「上原くーん!」
え?
結の声?
まさか。
俺は、声のする方を振り返った。
結だ。
うそだろ?
あいつが、こっちに向かって走ってくる。
乱暴に荷物を掴んで、俺も階段に向かって走った。