「1495日の初恋」

電車が来る。


待って上原くん、まだ、私、何にも話せてないよ。

ホームに続く階段を、必死で駆け上がる。


「結!」


名前を呼ばれて顔を上げると、階段の上に上原くんがいた。


一段ぬかしで、やっと上までたどり着く。

息が上がって、何も話せない。


上原くんの、驚いた表情だけが見える。

「お前、なんでここに…?」


私は荒い息をしながら、持っていた紙袋を差し出す。


「はい…これ、みんなから…。」


上原くんは、紙袋を受け取ると、ありがとうと小さくつぶやいた。

「これを届けに来てくれたの?」


私は、ブンブン首を振った。

「違う…上原くんに…言いたいことがあって…。」


息が上がったままで、うまく話せない。


電車がホームに滑り込んできた。

もう、時間がない。



< 145 / 388 >

この作品をシェア

pagetop