「1495日の初恋」
「ドアが閉まります。ご注意ください」
行ってしまう…。
もう会えなくなる…。
胸がギュッと掴まれるよう。
私は、上原くんに向かって叫んだ。
「私も上原くんが好き、大好きだから!」
もう、涙で上原くんの顔が見えない。
ゆっくりとドアが閉まる。
上原くんが、ドアに手をつけた。
私もドアに駆け寄り、上原くんの手に自分の手を重ねる。
上原くんの潤んだ瞳。
上原くんの唇。
大好きなのに、もう会えない…。
大好きなのに、もう触れることもできない。
キス…したいと思った。
あのときの矢島くんの気持ちが、今、分かった。
私は、ガラスに唇を寄せた。
上原くんも、同じ速さで唇を寄せる。
同じ気持ちだった。
ほんの一瞬だけの、ガラス越しのキス。
電車はゆっくりと動き出す。
私たちの手も、ゆっくりと離れていった。
上原くんを乗せた電車は、降るように咲く桜の中を走っていった。